研究内容 / Research
北海道での栽培に適した植物遺伝資源の改良を目指し、倍数性育種や種間雑種などの研究に取り組んでいます。また、生殖機構の解析を通した育種技術の開発を指向し、胚乳培養による倍数体作出や花粉管伸長プロセスの解明にも関心を寄せています。研究対象は、ハスカップやサルナシ、キイチゴ(ラズベリー)などのベリー類、リンゴ、ヒガンバナ科植物、ボタン、ペチュニア、最近ではイネも扱うなど多岐にわたり、多様な園芸作物の特性に着目しています。
01 花粉管伸長
「花粉が伸びる様子を延々と観察してみたい――」そのような思いから液体培地で花粉管が伸びる実験系を開発しました。この培地を使うといつでも花粉管にアクセスして解析することができます。「花粉管が伸びる時に何が起きているのか?」この事象の理解は、交配育種の可能性を広げることに繋がると考えています。
Keywords
二細胞性花粉、花粉発芽培地、核相変化、花粉管伸長のリズム、フローサイトメトリー、花粉管伸長能
02 雑種作出
種間雑種の魅力は、大きく表現型を変化させることができる点にあります。「2種のゲノムが混ざりあった時に何が生じるのか?」ハスカップでは、その形質の多様性を広げるためにミヤマウグイスカグラとの雑種を育成しました。果実成分の詳細な解析から、雑種果実で生じる成分の特性に迫っています。
Keywords
種間交雑、胚珠培養、成分変化、複二倍体、園芸作物、質量分析
03 倍数性育種
種子の中の胚乳は、通常では植物になることはありません。二倍体植物の場合、胚乳は三倍性の組織で構成されています。「組織培養を利用して胚乳からカルス*¹を誘導し(脱分化)、再分化させることで三倍体植物を作出する」ことが私たちの胚乳培養のコンセプトです。三倍体の作出のほか、コルヒチン処理と組み合わせたり倍数体間交雑を行うことで様々な倍数体を生み出し、育種的に利用できないか検証しています。
*¹ カルス:未分化な細胞の塊
Keywords
胚乳培養、三倍体、高次倍数体、異数体、倍数体の稔性
04 野生遺伝資源
栽培化や品種改良が進んだ作物の多くは、その野生種とは大きく姿を変えています。では、これから同様に栽培化されて大きく姿を変えていく可能性がある植物はあるでしょうか?北海道の野山にはまだこれから栽培化され、利用価値が高まる植物遺伝資源が豊富にあると考えています。ハスカップやサルナシはその候補です。これらの故郷を辿りながらその特性を解析し、育種利用を進める研究をしています。
Keywords
自生地探索、倍数性分布、系統解析、遺伝的多様性